税理士になるまで ③産後、消費税法から法人税法へ科目変更し、合格!
こんにちは。杉野真理税理士事務所の杉野です。
今回は、私の税理士試験における大きな転機、そして予想外の合格についてお話ししたいと思います。
■ 新たな挑戦:消費税法から法人税法へ
前回の記事で触れたように、消費税法は5回受験しても合格できませんでした。勉強すればするほど、どこか「楽しいとは思えない」感覚がつきまといました。
そこで産後のタイミングで、私は思い切って法人税法への科目変更を決断しました。それまでの努力を捨てるようで正直怖さもありました。しかし実務をやっていて法人税がわからなくて困る、という場面がこれまで何度もありました。また興味は多少感じていたため、ひょっとしたら消費税よりも興味を持てるかもしれないという望みを抱きつつ、ひとまず勉強を始めてみることにしました。
「法人税法はどうもTACが網羅的に内容を扱ってくれるらしい」という話を耳にし、TACのベーシックコースWeb通信を申し込みました。
■ 仕事と育児、そして勉強の「リアル」
育休の期間中にカリキュラムを進めました。子供の首が座った後はおんぶで寝かしつけをしながらテキストを読んだりしておりました。
育児しながら勉強するなんてすごすぎると言われましたが、育児100%の生活も逆にきついと個人的には思っておりました。
勉強はやればやるほど進歩がわかるし、点数にも反映されるし、基準が明確でいいと思いました。育児は何が正解かもわからないし、やって当たり前で人から評価される場面が少ないと思っておりました。
子供が1歳になった4月に保育園に入園し、私も職場復帰となりました。しかし仕事は産休・育休ですっかり忘れているわ、保育園の持ち物準備や送迎には毎日戸惑うわ、入園直後は子供が頻繁に体調を崩し、その看病をしているうちに私自身も体調を崩す…という悪循環でした。
3月までは何とかカリキュラムに食らいついていけましたが、GW以降の直前期に入ると一気に範囲が広がり、ドロップアウトしてしまいました。まともに答練を解く時間も体力もなく、調べたり考えたりする時間もないので、答えを見ながら提出するという情けない結果に…。それでも、「書き写すのだって何もやらないよりは勉強になるはず」と自分に言い聞かせていました。
本試験は、Sランクの理論である「収益の額」を覚えておらず、白紙。時間が1時間くらい余ってしまい、途中退出もできず、ただ試験会場で退屈な時間を過ごしました。自己採点の結果は20点程度で、不合格の点数もそれくらいでした。まさに散々な1年目でした。
■ 法人税法2年目:根拠のない「好き」と、まさかの合格!
本試験が明らかにできなかったため、すぐにでも講座を申し込んだほうが良いのは分かっていました。しかし、育休復帰後4ヵ月しか働いていない状況だったため、受講料を払うお金が手元にありませんでした。仕方なく年内は独学で勉強しました。
そして、翌年1月には受講料を用意できたため、本試験の出来具合を考えて再びTACのベーシック講座に申し込みました。
4月までは範囲も決まっているため、実力テストは満点近く取れる手応えがありました。しかし、直前期は一気に範囲が広くなるため苦戦し、答練は上位20~70%程度しか取れませんでした。法人税法は「最難関」「キング・オブ・税法」とも言われますが、範囲が膨大でやればやるほどその広さに絶望させられる日々でした。子供が産まれる前の3分の1くらいの勉強時間しか取れず、絶対的な勉強時間が不足しておりました。とても全範囲の学習には手が回らない感覚でした。
それでも、「法人税が好き、楽しいという気持ちは誰にも負けない」という、根拠不明な感情は常に持っていました。
昨年と違い、理論はS・Aランクはなんとか暗記できました。
本試験ではBランクの「欠損金の繰戻し還付」の理論が覚えられていなくて白紙。時間が足りず、「解散があった場合の資本金等の額の減少額」は覚えていたのに書けませんでした。
計算は設立1期目の論点はどうにかしたものの、為替予約のレートを間違えるという痛恨のミス。「全体的に間違ってはいけないところで失点した」と思いました。自己採点はボーダーマイナス10点だったため、不合格を確信していました。試験終了後はもう次へと気持ちを切り替えてTACの年内完結コースで勉強し直しており、合格発表の存在は半ば忘れていました。
■ 諦めなかった先に待っていた「衝撃」の結末
「来週の実力テストの準備をどうしようか」とTACのカリキュラムしか考えていなかったタイミングで、国税庁から封筒が届きました。「見るまでもなく不合格通知だろう」と諦め半分で開けたら…
税理士試験の合格通知書の様式を知っている方ならわかると思いますが、合格した時は過去に合格した科目の合格も併せて記載されます。不合格の場合は受験した科目の結果しか記載されておりません。
三つ折りになっている合格通知書を開いたところ、「ん?なんかこれまでと様式が違う?なんで簿記論と財務諸表論の合格が載っているの?」となり、その隣に法人税法・令和4年合格と記載されているのを見つけ…
信じられない、と何度も確認しました。
かなり動揺してしまい、どう受け止めたらいいのか気持ちの整理がつきませんでした。
法人税の奥の深さを多少なりとも知っていただけに、この程度の理解力で合格者と名乗ってしまっていいのだろうか、という気持ちにさえなりました。
しばらくは全く実感がありませんでした。
家族に結果を伝えたところ、一緒に喜んでくれて、徐々に実感が湧いてきました。本当に感無量でした。
正直、これまでこういう成績・出来具合で合格した経験はなかったので、衝撃でしかありませんでした。この経験から学んだのは、試験は水物であり、どんなに模試の成績が振るわなかったとしても、たとえ自己採点でダメだと思っても、最後まで諦めずに粘り強く取り組むことの重要性でした。
私は結局、税理士試験は10回受験し終止符を打つことができました。
戦歴は以下の通りです。
2011年5月 日商簿記2級・3級 ダブル合格
2012年 簿記論C 財務諸表論B
2013年 簿記論C 財務諸表論 合格
2014年 簿記論 合格
2015年 消費税法 A
2016年 消費税法 A
2017年 消費税法 A
2018年 消費税法 A
2019年 消費税法 59点
2020年 受験せず
2021年 法人税法 20点くらい
2022年 法人税法 合格
この法人税法の合格は、私の税理士としてのキャリアの大きな転機となりました。苦しい時期を乗り越えた経験は、お客様の課題解決に粘り強く取り組む力に、そして育児と勉強の両立は、効率的な時間管理や問題解決能力に繋がっていると実感しています。